ふだん何気なくしている「呼吸」。
でも、意識して行ってみると、思った以上に心が落ち着いたり、体がスーッと楽になったりすることがあります。
ヨガでは、ポーズ(アーサナ)と同じくらい「呼吸」が大切にされており、呼吸法だけを行うクラスもあるほど。
今回ご紹介するのは、初心者の方にも取り入れやすいヨガの基本呼吸法4選。
- カパラバディ
- アヌロマ・ヴィローマ(ナーディショーダナ)
- ブラーマリー
- シッタリー
呼吸のリズムを整えることで、自律神経が整い、集中力が高まったり、イライラが和らいだりと、心身にうれしい変化が起こります。
ヨガ初心者さんや、「なんとなく毎日が慌ただしい」と感じている方にこそおすすめの呼吸法。
まずは、ヨガにおける「呼吸法」の考え方から、一緒に見ていきましょう。
ヨガにおける「呼吸法」とは?

ヨガにおける呼吸法は、ただの「深呼吸」ではありません。
「プラーナ」と呼ばれる生命エネルギーを整え、心と体のバランスを取るための実践法として扱われています。
プラーナとは?

プラーナとは、「生きる力」や「生命の源」とも訳される、インドの伝統的な考え方。
呼吸のなかにこのプラーナが含まれているとされていて、呼吸を整えることは、自分の内側に流れるエネルギーを整えることでもあるのです。
呼吸と心の関係

呼吸が浅くなると、私たちの心は落ち着きを失いやすくなります。
逆に、ゆっくりと深く呼吸をすると、自然と気持ちが穏やかになってくるのを感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
ヨガの呼吸法は、そうした心と体のつながりを意識しながら、より深く、より健やかに呼吸するための練習です。
呼吸法を習慣にすることで、
- イライラしにくくなる
- 集中力が上がる
- 疲れにくくなる
など、日常生活にうれしい変化が生まれることも多いんですよ。
初心者でもできる!ヨガの基本呼吸法4選

カパラバディ(浄化とエネルギーチャージの呼吸)

カパラバディは、頭の中がモヤモヤするときや、やる気が出ない朝にぴったりの呼吸法。
強く吐く呼吸によって鼻腔から肺までの呼吸器系をまるごとクリアにし、心身のエネルギーを活性化してくれます。
腹筋も使うので、体も内側からポカポカ。
気分を切り替えたいときや、ヨガのウォーミングアップにもおすすめです。
- 鼻腔・肺・気道など呼吸器全体の浄化
- 肺活量の向上
- 血中酸素量アップ
- 腹筋や内臓の活性化
- 暗く沈んだ気分を明るくリセットする

サンスクリット語で「カパラ」は“頭蓋骨”、「バディ」は“輝く”。頭をクリアにして輝かせるような、リフレッシュ効果の高い呼吸法です!
カパラバディの姿勢


- あぐら座などの楽な座法で座る
- 背筋をスッと伸ばす(姿勢が崩れる場合は、ブランケットを敷いて骨盤を立てる)
- 肩の力は抜き、リラックス
カパラバディの手の形


- 基本はチンムドラー(手のひらを上に向けて、親指と人差し指を軽くつける)
- 初心者は、お腹の上に両手を置き、お腹の動きを感じながら行うのもおすすめ
カパラバディのやり方
- お腹をへこませ、一気に空気を押し出すイメージで
- 吐く、吐く、吐く…に意識を向ける
- 吸う息は意識しなくても自然と行われるので、受け身でOK
- リズムよく、まずは20~30回
- 慣れてきたら50~100回を目安に
カパラバディは「ヨガで汗をかきたい」という人にもおすすめ。
ちょっとした有酸素運動のような感覚で、短時間でもスッキリ感を得られます。
リズミカルに「吐く・吐く・吐く」を繰り返して、心と体が目覚めていくような感覚を味わいましょう。
カパラバディの注意点
- 動かすのは腹部のみ。肩・首・顔が動かないように意識する
- 呼吸に集中して姿勢が崩れてきたら、一度リセットを
- 呼気は鼻腔から摩擦音がするが、吸気は音が出ないのが正解
- 吐くときにお腹が膨らんでしまう場合は、手で軽くお腹を押して感覚をつかむ
- 妊娠中、腹部に疾患がある方、喘息発作中は行わない
アヌロマ・ヴィローマ(自律神経を整える片鼻交互呼吸法)


アヌロマ・ヴィローマは、心を落ち着けたいときや、気持ちや思考が切り替えられないときにおすすめの呼吸法。
左右の鼻から交互に呼吸することで、脳と神経のバランスを整えます。
緊張をゆるめ、集中力を高めるサポートにも適しており、瞑想前のウォームアップにも最適です。
- 自律神経のバランスを整える
- メンタルが落ち着き、集中力アップ
- 脳の左右のエネルギーの調和(イダー管とピンガラ管の浄化)
- 深く静かな呼吸を身につける土台作りに



サンスクリット語で「アヌロマ」は“順に沿った”、「ヴィローマ」は“逆らった”という意味。一方の鼻から吸って、もう一方の鼻から吐くという、交互に行う呼吸を表しています。
ナーディ(気の通り道)を浄化し、陰陽のエネルギーバランスを整える呼吸法です!
「ナーディ」については以下の記事で詳しく解説しています。


アヌロマ・ヴィローマの姿勢


- あぐら座などの楽な座法で座る
- 背筋を伸ばし、骨盤をしっかり立てる(必要であればブランケットを活用)
- 肩や首はリラックス
アヌロマ・ヴィローマの手の形


- 基本はヴィシュヌ・ムドラー(右手の人差し指と中指を折り、親指と薬指・小指を使う)
- 指の形が難しい場合は、親指と人差し指など、やりやすい形でもOK
- 左手はチンムドラーで膝の上に置く
アヌロマ・ヴィローマのやり方
アヌロマ・ヴィローマは、なんだか焦ってしまう日や、眠る前に気持ちを落ち着けたいときにぴったり。
私自身、仕事終わりや頭の中がザワザワしているときにこの呼吸を取り入れると、ふっと気持ちが整うのを感じます。
じつはこの呼吸法、「ナーディショーダナ(ナーディ=気の通り道/ショーダナ=浄化)」という調気法の一種でもあります。
左右の鼻から交互に呼吸を行うことでエネルギーの流れが整い、自律神経のバランスも自然と取れるのです。
また、右鼻だけ、左鼻だけを使った「片鼻呼吸」を単独で行う方法もあり、
- 右鼻からの呼吸:交感神経を活性化(やる気や集中を高めたいとき)
- 左鼻からの呼吸:副交感神経を優位に(リラックスしたいとき)
というように、目的に応じて使い分けることもできます。
心と体のバランスを整えたいとき、まずは“呼吸の通り道”に意識を向けてみる。
それだけで、自分自身とつながる感覚が少しずつ育っていくのを感じられるはずです。
アヌロマ・ヴィローマの注意点
- 肩、とくに右肩に力が入りがちなので、リラックスを意識する
- 姿勢が崩れて骨盤が倒れそうなときは、座面を高くして調整
- 呼気は「細く・長く・静かに」がポイント
- 音を立てないように、呼吸を“静かに通す”感覚で
- 保息は無理せず、慣れるまでは1~2秒など、短くてOK
ブラーマリー(蜂の羽音の呼吸)


ブラーマリーは、心がザワザワするとき、リラックスしたいのにうまく抜けないときにおすすめの呼吸法です。
鼻から息を吐くときに、「ん〜〜〜」という羽音のようなハミング音を響かせるのが特徴で、その振動が頭の中や体にじんわり広がり、自然と心を静めてくれます。
- 不安や緊張をやわらげ、深いリラックス状態へ導く
- 頭部の緊張や雑念を手放しやすくなる
- 音の振動が副交感神経に作用し、心を落ち着かせる
- 瞑想前の準備としても最適



「ブラーマリー」は、サンスクリット語で“蜂”の意味。
ハチの羽音のような低く柔らかい音を響かせることで、心身の静けさを取り戻す呼吸法です。
ブラーマリーの姿勢


- あぐら座などの楽な座法で座る
- 背筋をスッと伸ばし、頭はまっすぐ上に伸ばすイメージで
- 肩や顔の筋肉をゆるめてリラックス
- 耳をふさいだり、目の上に手を当てて暗くすると、より音の響きに集中できる
- 横になってもOK。シャバーサナでも行えます。
ブラーマリーの手の形


- 基本はチンムドラー(親指と人差し指を軽くつけて、ひざの上に)
ブラーマリーのやり方
- 無理に深く吸わなくてOK
- 音は鼻から出す
- 口は閉じたまま、ハミングのようなイメージ
ブラーマリーは、「呼吸法はむずかしそう…」という方にこそ、最初に体験してほしい呼吸法です。
私が初めてこの呼吸をしたとき、「音が頭や体の内側に響いて、なぜか安心した」ことを今でも覚えています。
「ん〜〜〜」という音が、外の世界の雑音を静かに消してくれるような感覚……。
この音の響きは、ティンシャやシンギングボウルがもたらす音の癒しととてもよく似ています。
違うのは、それを自分の呼吸と声で生み出せるということ。
外の音を聴くのではなく、自分の内側から響かせることで、深い集中やリラックスを自ら導く感覚が育ちます。
ブラーマリーの注意点
- 音は無理に大きく出す必要なし。心地よいボリュームでOK
- 姿勢や顔に力が入りすぎないよう注意
- 声帯を痛めないよう、のどに負担をかけないように優しく
- 気分が悪くなったり耳が不快に感じたら中止する
シッタリー(熱を冷ますクールダウンの呼吸)


シッタリーは、夏の暑さで体がほてっているときや、ヨガや運動のあとにクールダウンしたいときにぴったりの呼吸法です。
口から冷たい空気を吸い込み、鼻からゆっくり吐き出すことで、体の内側から熱を冷ましていきます。
シンプルながらも効果的で、自律神経が整い、心もスーッと落ち着くのが特徴です。
- 体温の調整(特に夏場や火照りが気になるときに)
- ほてり・のぼせ・イライラの緩和
- 乾燥の予防、血液の浄化
- 気分をクールダウンし、リフレッシュさせる



サンスクリット語で「シッタリー」は“冷却”という意味を持ちます。
呼吸によって熱を放ち、身体と心の“熱”を和らげるための呼吸法です。
シッタリーの姿勢


- あぐら座などの安定した座法で座る
- 背筋をスッと伸ばし、肩の力を抜いてリラックス
- 骨盤が後ろに傾くと呼吸が浅くなりやすいので、必要に応じてブランケットを敷く
シッタリーの手の形


- チンムドラー(親指と人差し指を軽くつけて、手のひらを上に向けて膝の上)
- 無理にムドラーをとらず、楽な位置に置くだけでもOK
シッタリーのやり方
- 舌を丸めるのが難しい場合は、舌先を口先から少し出すだけでもOK
シッタリーは、夏のヨガの締めくくりや、寝苦しい夜のリラックスタイムにおすすめ。
口から吸って鼻から吐く――このちょっとした違いが、驚くほどスーッと体を涼しくしてくれるんです。
舌を丸めるのが難しい方も、気にせずできる範囲で大丈夫。
「暑くてボーっとする…」そんなときも、この呼吸を試してみてください。
さわやかな冷気が、頭も心もリフレッシュさせてくれます。
シッタリーの注意点
- 外気が冷たい冬場は行わない(体を冷やしすぎてしまうため)
- 冷え性や寒がりの方は体調にあわせて無理せず行う
- 鼻から吐くときは、細く・ゆっくりを意識する
- アレルギーや口周りの不快感がある場合は控える
呼吸法を行うときのポイント


「呼吸法」と聞くと、難しそう・特別な技術が必要そうと思うかもしれませんが、大切なのは“自分にとって心地よい呼吸”を見つけることです。
練習を続けるなかで、自然と呼吸は深くなり、体も心も静かに整っていきます。
呼吸に慣れてきたら、以下のポイントを意識すると、より快適に呼吸法を続けることができるでしょう。
姿勢はラクに、でも背骨はスッと
- 骨盤を立てて座ると、肺がしっかり広がって呼吸がしやすい
- お尻の下にブランケットを敷くと、骨盤が安定しやすく◎
- 背骨をまっすぐに保つことが、エネルギーの通り道(ナーディ)を開く鍵
呼吸が深く入る姿勢をつくるには、「ラクだけどスッと伸びた背筋」が理想的です。
無理に背筋を張る必要はなく、心地よく座れる工夫(ブランケットやクッションなど)を取り入れることで、呼吸の質がぐっと高まります。
「ちゃんとやろう」と思いすぎない
- 吸う・吐くのカウントにとらわれすぎないでOK
- 苦しくなったら、いつでも自然な呼吸に戻って大丈夫
- “がんばる”より“味わう”呼吸を大切に
呼吸法の練習に集中しすぎると、「これで合ってるかな?」と不安になることもありますよね。
でも、呼吸は“自分自身との対話”の時間。
うまくやろうとせず、心地よさを感じられる範囲で続けることが一番大切です。
音やムドラーは「できる範囲」で
- 音を出すのが苦手なときは、無音での呼吸法から始めてもOK
- 手の形(ムドラー)も、まずはリラックスできる手の置き方からで大丈夫
- 続けていくうちに、自然と「自分なりの呼吸のスタイル」が見えてくる
呼吸法には「音を出す」「手の形をとる」など、決まり事がいくつかありますが、それを完璧にこなすことが目的ではありません。
まずは自分に合ったスタイルで始めてみて、呼吸に意識を向ける心地よさを味わってみてください。
形はあとから自然についてきます。
まとめ|呼吸は“人生を整える練習”
ヨガでの呼吸法は、単なる呼吸の技術ではなく生きる術。
たとえば──
- 苦しいときほど「ゆっくり吐いてみる」
- 集中したいときは「右鼻から吸って、左鼻から吐く」
- モヤモヤした日は「音を響かせることで心を静める」
呼吸の選び方ひとつで、今、この瞬間の在り方が変わっていきます。
無意識に繰り返している当たり前の行為「呼吸」。
こにほんの少し意識を向けるだけで、気持ちが整い、自分との関係がやさしくなるんです。
呼吸を整えることは、自分を整えること。
このシンプルで奥深い実感を、丁寧に育ててみませんか。